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第三章・34
だが今、その部屋のドアを挟んだすぐに東郷が息を殺して忍んでいる。
(内容によっては捕らえろ、という事だったが、一体何をしているんだ?)
話し声はうまく聞こえてこない。
業を煮やした東郷は、何とか中の様子が見えないかとドアの隙間に目を当てた。
「今だ!」
明は大声とともに、魔力をドアに向けた。
蝶番が明の魔術で音を立てて弾け、支えを失ったドアはもたれかかる東郷の重みで勢いよく部屋の内側へと倒れ込んだ。
「キャーッ!」
「覗き! ノゾキよーッ!」
慌てふためいて頭をあげた東郷の眼に、あられもない下着姿の川嶋が飛び込んできた。
「……ッ!」
「東郷!? あんた、一体!」
「ちっ、違う! 誤解だ! 川嶋!」
「何が違うんだい! まさかあんたが覗きをするような男だなんて思わなかったよ!」
「ちょ、ノゾキじゃない! 俺の話も聞いてくれ!」
「問答無用! 男ならいさぎよく認めな!」
「違うって! だいたい君に造反の疑いがあるから、こんな事にだな!」
「造反だって!? 一体全体どういうことだい!」
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