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第三章・40

 川嶋は203号室の机に顔を突っ伏して、ぐんにゃりしていた。  胸がきりきりと痛み、そのたびに涙が頬をつたう。  東郷に、恥ずかしい姿を見られた。  それを思い出すたび、どうしようもなく心は落ち込んでいく。  ああ、と思わずうめき声をあげた時、ドアがノックされた。 「川嶋様、いらっしゃいますか?」  返事を待たずに入ってきたのは、愛だ。  川嶋は、慌てて涙をぬぐった。 「どうしたんだい?」  無理に笑顔を作ろうとしたが、うまくいかなかった。  頬が不自然に引きつるのが自分でもわかる。 「川嶋様、これを持って私についてきてください」  愛が手渡したのは、大きな救急箱だった。 「どういうことだい。こんなもの、どうするのさ」 「いいから早く」  川嶋は、のろのろと椅子から立ち上がった。  よく解からないが、こんな所にこうして独りでいても落ち込むばかりだ。  何かやっていた方が、気がまぎれるだろう。  愛に伴われて向かった先に、川嶋は驚いた。  何と、大魔闘士の居住区前まで連れて来られたのである。

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