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第三章・43
「ちょっと……どうするんだよ。これ」
だが、ケガ人を放っておくわけにはいかない。
川嶋は、東郷の傍らにしゃがみこんだ。
「ずいぶんとひどくやられたね。動けるかい?」
「うう。何とか」
「とりあえず、屋内へ」
川嶋は東郷に肩を貸すと、住居内へ入った。
体格がいいうえ、怪我で脱力している東郷はやけに重く感じられたが、ようやっとの思いで川嶋は彼をベッドの上へ転がした。
「うぐぐ。入江のヤツ、手加減というものを知らん」
「入江とやりあったのかい!? これくらいで済んでよかったと思いな」
東郷の体は、打撲のほかにも切り傷や裂傷に近いものまで受けており、衣服には血の跡もついていた。
とてもまともに服が脱げる状態ではない。
川嶋は救急箱からハサミを取り出し、じょきじょきと衣服を切っていった。
「はっ!」
ビッ、と音を立て、乾いた血で体に張り付いた布をはがすと、生々しい傷口があらわになった。
「いででででで! もっと優しく」
「我慢しな。男だろ」
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