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第三章・44

 こういうのはゆっくりやるとかえって痛いんだよ、と言いながら、濡れタオルで傷口を丁寧に拭く。  体を清めた後、消毒をし、薬をたっぷりと塗り込んだ。 「下は自分で……いででで」 「無理するんじゃないよ。ケガ人はおとなしくしてな」  川嶋は、東郷のズボンも同様に切り刻み、手当てを施していった。 「はい、終わり。ふふ、いい格好だね」  パンツ一丁で全身湿布やら包帯やらでいっぱいになった東郷を、川嶋は笑った。 「すまん」  情けない自分の姿に東郷は頭をかいたが、ふと思いついたように笑顔を向けた。 「これでおあいこだな」 「え?」 「その、あの、さっきの」    は、と川嶋は赤くなった。  気が付けば、東郷はほとんど裸に近い状態である。  日に焼けた逞しい体が、改めて目に飛び込んできた。 「ばッ、馬鹿言ってるんじゃないよ」  取り繕うように、急いで毛布を東郷にかけると、仕上げをするよ、とその手を取った。

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