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第三章・45

 傷をいやす、回復の魔力を川嶋は送り込んだ。  後進のための指導者を目指す者にとっては、必須能力だ。  弟子が修行中にケガをした際には、その場で応急処置としてある程度の傷は治せなくてはならない。  温かな、慈愛に満ちた魔力が東郷の体だけでなく心も満たしていった。  痛みがどんどん引いてゆく。  ようやく自由に動かせるようになった腕を上げ、東郷は川嶋の手を包むように手のひらをのせた。 「ありがとう。川嶋」 「いいんだよ」  傾きかけた夕日の光が窓から差し込み、二人を赤く染める。  どちらからともなく頬を寄せ、静かに唇を合わせた。

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