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第三章・54
「……悦かったか?」
「うん……」
はぁはぁと口で呼吸している愛は、話す余裕がない。
ただ黙って、明の体にすがりついた。
愛の体に走る細かな痙攣を、明は感じていた。
(少しは、役に立てたのかな)
そんな謙虚なことを明は考えていたが、愛は至上の歓びを味わっていた。
(これが、好きな人とのセックス……)
心の奥底に溜まった澱が、昇華された気がした。
悲しい過去も、明がいれば背負っていける気がしていた。
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