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第三章・55
翌朝、二人連れだって食堂に現れた東郷と川嶋の姿を見つけ、明は愛を肘でつついた。
「おい、うまく行ったみてえだぞ。あの二人」
「うぁ~。すごくいい雰囲気」
「二人して朝帰りかよ。東郷のやつも、隅に置けねえな」
「何かあったのか。あの二人に」
不思議そうな柊一の額を指ではじいて、明は意地悪く笑った。
「お子様は、まだ知らなくってもいいことなんだよ」
「いつも言ってるが、俺を子ども扱いするのはよせ!」
派手な音を立てて柊一は明の手をはたき、目を吊り上げた。
「何ムキになってんだよ。ホントの事だろ!?」
「うるさい。黙れ!」
柊一と明は、がっ、と二人でお互いの両肩を掴み、思い切り押し合う形となった。
瞬く間に、周囲に人垣ができる。
「何だ、何だ!?」
「喧嘩だ、喧嘩!」
騒ぎ立てる野次馬を制し、大きな声が間に割って入った。
「何事だ。二人ともやめないか!」
力づくで柊一と明の腕を振りほどいた声の主は、東郷だ。
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