182 / 259

第三章・55

 翌朝、二人連れだって食堂に現れた東郷と川嶋の姿を見つけ、明は愛を肘でつついた。 「おい、うまく行ったみてえだぞ。あの二人」 「うぁ~。すごくいい雰囲気」 「二人して朝帰りかよ。東郷のやつも、隅に置けねえな」 「何かあったのか。あの二人に」  不思議そうな柊一の額を指ではじいて、明は意地悪く笑った。 「お子様は、まだ知らなくってもいいことなんだよ」 「いつも言ってるが、俺を子ども扱いするのはよせ!」  派手な音を立てて柊一は明の手をはたき、目を吊り上げた。 「何ムキになってんだよ。ホントの事だろ!?」 「うるさい。黙れ!」  柊一と明は、がっ、と二人でお互いの両肩を掴み、思い切り押し合う形となった。  瞬く間に、周囲に人垣ができる。 「何だ、何だ!?」 「喧嘩だ、喧嘩!」  騒ぎ立てる野次馬を制し、大きな声が間に割って入った。 「何事だ。二人ともやめないか!」  力づくで柊一と明の腕を振りほどいた声の主は、東郷だ。

ともだちにシェアしよう!