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第三章・57

「罰として、ひとつ腕を振るってもらおうか」 「何だよ」 「ペアのリングを作ってくれ。センスのいいやつを頼むぞ」 「何でオレがそんな面倒な事」    明の抗議に東郷はにやりと笑うと、首に腕を回して耳元で声をひそめた。 「校長印を偽造できるほどの腕前だ。簡単だろ? それとも、その事を教官にバラされてもいいのか?」  ちッ、と舌打ちをし、明は東郷の腕を振りほどいた。 「解かったよ。でも、そんな物どうするんだ?」  ひとつ笑った後、東郷は川嶋の方を向いた。 「亜希のために」 「え!? あたし!?」  急に話題を振られ、川嶋は慌てた。  しかも、リングだなんて、どういうことだ。 「その……、君がもう、俺以外の男について行かないように」 「正人……」  川嶋は頬を染め、小さな声で応じた。 「うん……そういうことなら、かまわないよ」

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