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第四章・2
0.5カラットの小さなダイヤだが、SIクラスでエクセレントカットという、質のいいものだ。
贈る相手は、馴染みの店のマダム。
このたび80歳の誕生日を迎える。
愛も明と共に彼女の店で飲んだことがあるが、実に落ち着いた雰囲気に、心からゆったりとくつろぐことができた。
そんな店内を作り上げる彼女もまた素敵に品のいい女性なので、プレゼントなら誤魔化しのない良いものを、と愛に推されたのだ。
「結構、早く片付いたな。ありがとうよ」
「どういたしまして。小粋なブレスレットのお礼だよ」
「高くついたぜ~」
そんな風に笑い合いながら人込みを歩いていると、明の肩がすれ違った男と接触した。
「おい、兄ちゃん。ぶつかっておきながら、詫びもなしかぃ。あぁ?」
「あ、こりゃどうも。スミマセンでしたねぇ」
二人のやり取りに、愛は眼を丸くした。
因縁をつけたのは明ではなく、派手なシャツを着たガラの悪い男。
そして素直に謝った方が、明その人なのだ。
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