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第四章・5 ~事の起こり~

 少年時代の明は、とにかく粗暴だった。  魔導学校だろうが外の町村だろうが、因縁をつけられると完膚無きまで叩きのめしていた、と後の愛が回想するほど、明は乱暴者だった。  共に座学を終え、まだ講師や他の受講者の残る講義室で、双子座の大魔闘士・入江 凜太朗(いりえ りんたろう)と、射手座の大魔闘士・東郷はお喋りをしていた。  彼らは総勢12名の大魔闘士を束ねる、明や愛より年長の魔闘士たちだ。  お喋りも、初めのうちは受けたばかりの講義内容に関する考察だった。 「東郷。君は、19世紀後半に廃止されたという、あの政令についてどう思う?」  こんなお堅い話から、次第に自分の身の回りの話になる。 「弟が最近、言うことをきかなくて困るよ。何にでも口ごたえしてくる」 「あの子も、もうすぐ7歳だ。中間反抗期だよ」 「中間反抗期?」 「そう。2歳の第1次反抗期と、思春期の第2次反抗期との間にあるそうだ。自発性が発達している証拠だよ」  自発性ねぇ、と東郷は腕を組んだ。  そんな彼を見て入江は、にっこり微笑んでいる。 「そろそろ手を離して見守る時期だ。ゆったり構えて……」

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