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第四章・8

「入江様!」  愛は、思わず声を上げていた。  そしてこの愛の言葉に、天使のごとく清らかな神童・入江が現れたと知り、人垣が乱れた。  その人と人の合間から見えるのは、よろよろと身を起こした若い男が5人。  服は汚れ、ところどころ破れたり綻んだりしている。  入江の姿を見て取った明はにやりと笑い、ふらつく男の尻を景気よく蹴り上げた。 「オラァ! 二度とこの町に来るんじゃねえぞ!」  尻を蹴られて飛び上がるようにつんのめった男たちは、そのまま後も見ず逃げ去った。  やんやと拍手喝采を受けて、上機嫌な明だ。  だが、入江を見る愛のまなざしは、何かを訴えかけている。  そこへ、本城を伴い東郷も到着した。  何があったかを聞いてからここへ到った彼は、険しい顔つきだ。 「皆さん、お騒がせしました」  そんな東郷の言葉にも、人々はやはり明の暴力行為を褒め称えるのだ。

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