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第四章・19

 仕返ししようぜ、とは例の5人の若者の一致した意見だった。  そして、仕返しには様々な種類と方法がある、ということを明はまだ知らなかった。  何も明自身に、彼らが直接手を下すことはないのだ。  明自身に、彼らが被ったような暴力を振るうことはないのだ。  もっと、効果的な報復がある。  幼稚な悪さをしでかして廻っていても、さすがに大学まで進んで高度な教育を受けているだけあって、狡猾な方法をいろいろと練っていた。  そして彼らには、強力な背景がある。  大病院の院長  銀行の頭取  大企業の筆頭株主  急進左派連合の議員  弁護士  以上の父、あるいは母を持つドラ息子たちである。  そして、このような権力や財力を持つ人間にすり寄ってくる、ある種の人間と、彼らは親しかった。  マフィアである。  もっとも、街を徘徊しては恐喝をしたり、薬の売人をしたりという、チンピラとしか交流はなかったが。

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