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第四章・22

「用意、できた?」 「今、井頭(いとう)くんが来たトコ。うっわ。ヤらしそうなオトモダチ連れて来たよ~」 「ヤクはある?」 「えらく奮発してくれたよ。こんなに使わないのに」 「いいじゃん、貰っとこう。後で遊べばいいさ」  その間もスマホで連絡を取り合い、悪戯の準備を着々と進める5人組だ。  だが、彼らには悪戯でも、被害者となる愛に与える心の傷は如何ばかりか。  いや、悪戯どころの騒ぎではない。  これは立派な犯罪だ。 「今、マーケットを出た」 「右と左、どっちに向かう?」 「左……、だな」 「OK、待ち伏せする」  溢れんばかりの財力と、何者をもひれ伏させる権力。  それらに物を言わせる家庭に育ったために、他人の痛みを想像する能力が欠如してしまっている、どこか壊れた若者たちだった。  犯罪を犯罪とも思わない、ひどく捻じれた若者たちだった。

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