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第四章・30

 周囲には、10名程度の男たちが。その中には、知った顔もあった。 (明が、こないだ乱暴した人たち!)  そこで愛は、ようやく状況を把握した。  あの時僕は、明の傍にいた。  彼に力で敵わないから、その仲間の僕を痛めつけてやろう、という発想だ。  どうしよう。  明のように、僕も彼らを少々懲らしめてでも脱出するべきでは?  幼い頃は、魔導学校へ来る前は、妓館に囲われ誰にでも肌を許す生活を強いられていた。  もう、あんなに辛い思いはしたくない。  でも、東郷様が言ってらした。 『魔闘士の務めは、善良な人々を守る事なんだ。普通の人たちを相手にケンカをするような魔闘士は、罰せられるんだよ』  入江様が言ってらした。 『一体どうして、そんな真似を。彼らをそこまで荒んだ心の持ち主にした家庭環境は?』  そして入江様は、悪の心を正すには、奥底に秘められた悲しさを、まず癒すべきだと信じていらっしゃる。

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