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第四章・46

「こいつらに、テレパシーで最高に素敵な悪夢を見せてやれ。私はそういう事は巧く思いつかんが、ワルのお前ならばできるだろう」 「よく言うな」  この兄にして、この弟あり、だぞ。と、蒼次郎は苦笑した。  でもまぁ、この凜太朗がここまで本音で動いて自分を曝け出したのだ。  これはワルの弟としては赤飯を炊いて喜ぶところだし、盛大にお祝いせねばなるまい。 「では、腕によりを掛けて、最高の Sweet dreams を見せてやろう」 (とはいうものの、一般人が魔導衣を纏った凜太朗から極大のテレパシーを喰らえば、夢どころかショック死するだろうからな)  ほんの少しだけ残された、情けというわけか。 「しかしこの蒼次郎、魔導衣はなくとも手加減と言うものを知らんぞ。クッククク……」 「芝居がかった奇妙な声で笑うのは止めて、早くやれ」 「馬鹿、雰囲気を壊すな」  こんな漫才のようなやり取りの末に見せられた、蒼次郎のテレパシーによる極大悪夢。  天に突き上げた、両の腕。  その広げた両手の指先からは、血のような赤を持つ鋭い閃光が放たれた。  何本もの赤い軌跡はそれぞれが愚か者たちの脳を直撃し、その後彼らは、どす黒い霧のようなオーラに包まれた。

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