234 / 259

第四章・48

 やたら説明臭い、と蒼次郎は凜太朗を睨んだ。 「俺はただ、岬が受けた苦しみを、そのまま奴らに味わわせてやってるだけだ」  不機嫌な蒼次郎の声に、凜太朗は唇を結んだ。  そうだった。  今回、一番苦しんだのは岬。  困っている人を助けようとしたら、薬を嗅がされ注射され。何人もの男に辱めを受け……。 「多分奴らは今、子どもに戻った気持ちでいるはずだ。岬と同じように、大人に騙され、輪姦されてる目に遭ってるはずだ」 「なるほど。この大馬鹿者たちにふさわしい悪夢だ」  ただ、この夢は冷めんかもしれんな、と蒼次郎も凜太朗も思っていた。  時が過ぎ、テレパシーの効果が切れたとしても、トラウマとなって残るだろう。  永遠に脳裏から消えない、Nightmare 。 「日中に記憶が甦って、錯乱することもあるかな」 「通常の暮らしは、もうできまい」  それでもかまわんがな  は、と蒼次郎は思わず凜太朗を凝視した。  兄らしくない、凍てつく氷の様に冷たい言葉だった。  しかし次の瞬間にはもう、岬を清めてやらねば、と悲しそうな眼差しになっているのだ。  にやり、とこちらは悪党じみた顔をして、テレポーテーションの準備に入った。  魔導学校へと戻る、支度を整えていた。

ともだちにシェアしよう!