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第四章・48
やたら説明臭い、と蒼次郎は凜太朗を睨んだ。
「俺はただ、岬が受けた苦しみを、そのまま奴らに味わわせてやってるだけだ」
不機嫌な蒼次郎の声に、凜太朗は唇を結んだ。
そうだった。
今回、一番苦しんだのは岬。
困っている人を助けようとしたら、薬を嗅がされ注射され。何人もの男に辱めを受け……。
「多分奴らは今、子どもに戻った気持ちでいるはずだ。岬と同じように、大人に騙され、輪姦されてる目に遭ってるはずだ」
「なるほど。この大馬鹿者たちにふさわしい悪夢だ」
ただ、この夢は冷めんかもしれんな、と蒼次郎も凜太朗も思っていた。
時が過ぎ、テレパシーの効果が切れたとしても、トラウマとなって残るだろう。
永遠に脳裏から消えない、Nightmare 。
「日中に記憶が甦って、錯乱することもあるかな」
「通常の暮らしは、もうできまい」
それでもかまわんがな
は、と蒼次郎は思わず凜太朗を凝視した。
兄らしくない、凍てつく氷の様に冷たい言葉だった。
しかし次の瞬間にはもう、岬を清めてやらねば、と悲しそうな眼差しになっているのだ。
にやり、とこちらは悪党じみた顔をして、テレポーテーションの準備に入った。
魔導学校へと戻る、支度を整えていた。
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