238 / 259

第四章・52

 気持ちのいい酔いも手伝って、明はあの時の気持ちを素直に口にした。 「あの時、お前言ったよな。『オトナになったね。明』って」 「うん」 「俺がオトナになれたのは、お前のおかげなんだぜ。愛」  私!? と愛は驚いている。  口にした途端、照れくさくなってしまったので、明は月を見ながら歩みを止めずに続けた。 「ガキの頃はよぉ、一般社会に出る時は任務で殺しをするためだった。外の世界に、仲のいい知り合いなんかいなかった。だろ?」  こちらも黙って、だが月に照らされた明の横顔を見ながら、相槌を打つ愛だ。 「今は違う。馴染みのバーも出来たし、愛、お前の行きつけの店も知ってる。俺がやくざ者と小競り合いになったら、どうなる? 代わりに、俺と接点のある店の人間や知り合いが酷い目に遭わされッかも、だろ?」

ともだちにシェアしよう!