240 / 259

第五章 愛してる

 ちょっと寄り道していこうぜ、と明に連れて行かれたのは、洒落たブティック・ホテル。  どうりで、と愛は唇を丸め、眼を細くした。  どうりで、さっきから刺激物ばかり私に勧めてきたわけだ。  二人は今、所用で都市まで来ていた。  昼食はエスニック料理、食後にはコーヒー。  おまけに普段は飲まない煙草まで吸わされて、愛の後膣はきゅんきゅんに疼いているのだ。 「いいだろ。な?」 「最初から、その気だったくせに……」  さらにフロントで解かった事だが、用意周到に予約までしていた明だ。  人気のホテルだから、と言い訳をする彼は、眼には見えない尻尾をちぎれんばかりに振っている。  これだけ期待させておいて、嫌だと駄々をこねるのは可哀想な気がした。 「趣味の悪い部屋だったら、帰るからね」  わずかばかりの抗議でもって、そんな些細な意地悪を言うにとどめた愛だったが、部屋に入ると負けを認めた。

ともだちにシェアしよう!