33 / 56

30亀裂

 港町から帰還したセナは落ち込んでいた。自分の無用心な行動のせいでリドレイに怪我をさせ、アディの魔王としての過去を垣間見たからだ。  魔王の寝室でシーツにくるまり、アディと顔を合わせる事が出来ない。そんなアディは何も言わずベッドの端に座り語りだした。 「150年前、俺は聖剣ごと町や人を消滅させた。当時の魔王は人との戦争ばかりで、魔族に無駄な戦をさせていたのだ。人間は魔族に対抗しようと神族と手を組み、聖剣を創り出した。聖剣は一度使うとなぜか消滅するので、その度に人間は召喚の儀式として贄を使っていた」 「・・・もし今も聖剣が召喚されたら、また人を消すのか?」 「消す」 「ッ!」  アディは躊躇う事なく答えた。頭でわかってはいるのだ、アディは人ではない。それが魔族という本質なのかもしれない。 「俺が聖剣を使おうとしたら、・・・消す?」 「消す」 「アディは!アディは・・・どうして魔王なの」  セナは飛び起きて、アディを責めた。だが期待していた言葉は返って来なかった。 「魔王がいかに強大かを人間に知らしめ、全土を支配する事で真の平安を作るためだ。残念だが、この世界は力でしか世を変えることが出来ないのだ」 「・・・俺、勇者辞める」 「そうか」 「今日はリドレイのところで寝るから」 「・・・好きにするといい」  セナは眠るぴよ太を、バスケットごと抱えて魔王の寝室から出た。途中ロビとすれ違い、今日はリドレイの部屋で寝ると伝えるとバスケットを預けて走り出した。  その様子にロビは、魔王の寝室へ入る。 「魔王さまぁ、セナさまどうしたのぉ?」 「人を殺す残酷な魔王が嫌になったらしい」 「・・・・はぁ?」 「ロビ、力で世界を支配する事は間違っているか?」 「どうだろうな、魔族は力が全ての優劣主義だし。人間のセナさまには理解できないだろうし、わかってもらおうとも思ってない」 「ロビは素直だな」 「セナさまが城を出たらどうするんだ?」 「さて、どうするかな。ロビ、頼みがある」  アディはベッドに倒れ込むと、静かに目を閉じロビに頼み事を告げた。  その頃セナはリドレイの居る客室の前で蹲っていた。気配に気付いたリドレイが扉を開けて中へ入れてやる。 「どうした?魔王とケンカしたか」 「まぁ、そんなところ。リドレイも、世界を力で支配する派?」 「そうだな。生まれた時からそう教わってきたし、結局のところ人間と話し合いはもう無理そうだしな」 「そうか・・・。心のどっかでは、アディはロマンチストだから人間とは争わずに静かに魔族と暮らすのかと思ってたんだ」 「まぁ、魔王としてのあいつも色々あったからな。アーディフィエルがこの城に来た時は、まだ赤ん坊で瀕死の母親と流れ着いた。母親は半魔だったから、多分人間の土地で迫害を受けて逃げて来たんだろうな。先代の魔王は純血派で、アーディフィエル達を無下に扱った。そのせいで母親は死んだ」 「え・・・」  アディは以前、半魔だと聞いたが詳しい事は知らなかった。 「アーディフィエルはまだ幼かったし魔力も弱く力もないから、他の魔族からも圧力かけられてたな。でも元々才能はあってメキメキ力を付けていくと、あっさり先代魔王を倒した。その先代魔王は、俺様の親父なんだけどな」 「・・・・」 「好戦的な親父が倒れた事で人間とのいざこざは減ったけど、根付いた恐怖は消える事はない。人間は聖剣を創ろうとした。持ってるだけで魔力を打ち消す武器だ。そんなもん火種にしかならねぇだろ?だからアディは聖剣を破壊した。力が強すぎて町ごと消したけどな」 「そうなんだ・・・」  人の命を奪った事に変わりはないが、アディなりに終わらせようとしたのかもしれない。そして召喚の儀式の犠牲になった人間への、せめてもの救いになったのだろうかと考えた。  リドレイはそんな悲しい顔のセナの顎を取り、上向かせた。 「ところでよ、聖剣の野郎に何された?」 「何って、ちんこ触られた。あ、キスもされたな」 「なんだと!?舐めて消毒してやる、スボン脱げ」 「ええっ!?なんでそうなるんだ!あっ、こらっ、リドレイっ」  セナをうつ伏せにさせると、スボンを脱がし床に放り投げた。尻にキスすると、男前な笑顔でニヤニヤする。 「たっぷり舐めてやるからな」  

ともだちにシェアしよう!