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続けてぎっと強く男を睨むと、その首元に巻かれていたレモンイエローしたタイの結び目をぐっと掴み、全力で自身の方へと引き寄せる。
「今すぐ、僕を莉宇のところへ連れて行くんだ」
一瞬、男は驚いた顔をしたがすぐさまニヤリと余裕の笑みを浮かべた。
「連れて行ってどうするんだ?」
その表情が余計、瑠輝を逆撫でする。
拳の一つくらい、美貌のその顔に入れたかったが、今はそれよりも莉宇を助ける方が先だと思った。
「どう、って決まってるだろ? 莉宇を――僕の親友を助けに行くんだよ」
怒りで震える唇を、瑠輝はぎゅっと噛み無理やり笑みを浮かべはことで、何とか冷静さを保とうとする。
すると、男はこう言った。
「キミじゃ無理だ。オメガのキミだけでは、決して優しいお友達を助けることはできない」
「無理って、どういうこと? 行ってみなきゃ分からないじゃないか」
間髪入れずに、瑠輝は更にその結び目を引っ張りながら訊ねる。
「――超エリートアルファの力は、普通のアルファよりも更に強い。だから、オメガ独りが乗り込んだところでどうにかなるレベルの話しではない。仮に駆けつけたところで、二人共アルファの玩具にされて終わるだけだ」
「だからって真実を知ってしまった以上、莉宇を僕の身代わりになんてさせられない」
噛み付くように瑠輝はそう言うと、不気味な笑みをゆっくり浮かべながら男は口を開いた。
「――ということは、キミがお友達の代わりになる覚悟ができたということかな? 本来、なんびとたりともこの施設への不法侵入は厳罰の対象となる。それを大事 にせず、ましてや“オメガのキミ”を助けたんだから、その対価としてやはり“オメガのキミ”が身体を差し出さないのはおかしい話だよな」
鋭く男は眼光を光らせてそう言うと、ネクタイを掴んでいたはずの瑠輝の手を、いつの間にか形勢逆転とばかりに大きな右手で捕らえる。
また、反対側の手では瑠輝を逃がすまいとして、大きな音を立てながらドアへ手を付き、そこへ追い詰めた。いわゆる、壁ドンの体勢である。
ドアが叩れた大きな音、そしてこの体勢。内心、瑠輝は酷く動揺していた。
しかし、ここで怯む訳にはいかない。
とにかく、莉宇を助けるのだ。
でも、怖い。
怖くて、恐くてたまらない。
酷い恐怖心に苛まれていたが、瑠輝はそれをおくびにも出さず、わざと男を挑発するよう睨みながら言った。
「――覚悟はできてる。ただし、それは僕が“オメガ”だからじゃない。これは僕自身の友情のため、大切な人を――莉宇を護るために身体を差し出すことを決めたんだ」
そう言って、瑠輝は自身の左手を男の頬へそっと添える。
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