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開かれたそのドアの奥からは、思わず耳を塞ぎたくなってしまうような、淫猥な濡れの音が聞こえる。
間違いなくそれは、いつも優しい莉宇と先ほどその周りを取り囲んでいた男たちのもので、瑠輝は耳塞ぎたくなった。
獣のような莉宇の荒い吐息と声。
瑠輝は早くそこから莉宇を助け出したかった。
しかし、今から自分か代わりになるのだと思うと、やはり怖いと思った。
何せ、瑠輝は誰とも関係を持ったことがないどころか、発情期が訪れていないせいで性欲に淡白で自慰さえまともにしたことがなかったのだ。
それでも大切な友人を助けるため、護るため、きゅっと真一文字に口を閉じると何度目かの覚悟を決め、男の前へ進んだ。
「やめるか?」
莉宇が男たちから辱めを受けているであろうベッドルームの前に立つ瑠輝へ、再び男はそう問いかけた。
「――大丈夫」
瑠輝は、自身でも驚くほど非常に冷静な態度で答える。これを合図に、瑠輝は潔く自らベッドルームへ乗り込む。
予想以上に大きく乱れたキングサイズのベッドの上、瑠輝は思わずはっと大きく息を呑んだ。
抱かれるということは、こういうことなのだと瑠輝は知り、あまりの衝撃で今にもそこへ崩れ落ちてしまいそうなほど脚元が大きく震えた。
やがて、ベッドの上で莉宇と絡む一人の裸の男がその入口へ立つ瑠輝の存在に気が付き、声をかける。
「おっ、今度の新入りは可愛い顔したオメガか」
その声に、何度も男の熱を穿たれてドロドロにさせられていた莉宇ははっと顔を上げ、こちらを見た。
「瑠輝! なん、で⋯⋯」
快感を与えられ上気していたはずの莉宇の顔が、みるみる内に蒼くなっていく。
「莉宇を助けに来た」
瑠輝はそう一言だけ告げると、躊躇うことなく学ランをその場へ脱ぎ捨てる。
ベッドの上で莉宇を掻き乱していた男たちは、一斉にその動きを止めると瑠輝へ注目した。
注がれるねっとりとした厭らしい視線に、瑠輝は強い吐き気を覚えたが、莉宇は何度もそれ以上に辱めを受けているのだと思い、自らのワイシャツのボタンに手をかける。
そこから一つずつボタンを外していき、白く瑞々しい瑠輝の肌が露出し、アルファから項を護る漆黒のネックプロテクターが表出した。
「瑠輝!!」
咎めるように莉宇は強く名前を呼んだが、覚悟を決めた瑠輝はそれを無視し、上半身を露わにする。
目の前の男たちが、ゴクリと生唾を呑み込む音がした。「本当にオメガだったんだ」という感嘆の声が聞こえ、生理的不快感が込み上げる。
気持ちが悪い。
気持ちが悪くて、今にも瑠輝は逃げ出したかった。
瑠輝を護るためこの二週間、逃げずに男たちへその身体を差し出していた莉宇のことを考えると、絶対に今、ここから逃げ出す訳にはいかない。瑠輝は強くそう思っていた。
だが、そこまで決意する上で全くの葛藤がなかった訳でもなく。都度、瑠輝は悩み迷いそして覚悟を決めたつもりだった。
だったはずなのだが⋯⋯。
いざ男たちの前へ立つと、ズボンを脱ぐことさえ大きな抵抗を感じていることに気が付く。
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