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薄い唇の感触が、瑞々しく弾力のある瑠輝の桜色した唇に重なり、チュッと音を立てる。 それだけで瑠輝の全身を巡る血液がフツフツと音を立てるのが分かった。 ――これって、もしかして? 困惑していると、更に煌輝は音を立て桜色した瑠輝の唇を吸っていく。 チュッと可愛らしい音から次第に、ちぅ、とねっとりした音へとそれは変化し、瑠輝の思考は停止してしまう。 放心状態である瑠輝をよそに、煌輝は桜色の上唇をそして下唇をそれぞれ執拗に食み、顔の角度を都度変え、愛でていく。 「はっ⋯⋯ぁっ⋯⋯っ」 上手く息ができない。 煌輝に、溺れていく。 酸欠状態で目の前がクラクラしてきた瑠輝に、煌輝は「鼻で呼吸して」と優しく囁く。 「ど⋯⋯して?」 激しく追い立てる煌輝の唇に、瑠輝は息絶えだえに訊ねる。 形の良い煌輝の唇は、二人の間でいつの間にか生まれていた蜜でふやけ、紅く色付いていた。その光景がとても扇情的で、同じ男相手だというのに、瑠輝はぞくりとした。 「口封じのキス、だ」 そう言って、煌輝は自身の唇を舌でペロリと舐める。 「信じてない訳じゃない。だけど、万が一のことを考えて、な」 目の前の王子様は言葉とは裏腹に精悍な笑みを浮かべると、瑠輝の意志を確認することなく、再び獣じみたキスを始めた。 「ん⋯⋯っ⋯⋯ぅふぅ⋯⋯」 桜色した瑠輝の唇の間を、ぬるっとした舌の感触が割り入ろうとする。 ――何だ、これ。 キスって、唇を合わせるだけじゃないのか? 自身の歯列を丁寧になぞり、こじ開けようとする煌輝のその艶かしい舌の感触に、瑠輝は困惑しながらも下腹部の辺りがぞくぞくと粟立つのを感じていた。 「ふっ⋯⋯あっ⋯⋯ああ」 少し鼻にかかった声を瑠輝が洩らした瞬間、その舌は強引に口腔内へと侵入し、迷いなく舌を絡めた。ぴちゃぴちゃと羞恥音を聞かせ、煌輝の口腔内から飲み込めないほどの蜜がこちらへと流れてくる。 発情期もまだである瑠輝には、そういった行為は無縁であった。元々、性欲に淡白ということもあり、自身で欲を満たすこともあまりなかった。 しかし煌輝からのキスは、瑠輝の全身へ新たな刺激を与えていく。瑠輝はその刺激の正体が分からず、自身の身体が変化していくことを危惧していた。まるで、これから発情期が訪れてしまうのではないかと、そう思ってしまうほどに。 「キス、どう?」 吐息混じりで囁いた煌輝に、潤んだ瞳に上がる息のまま瑠輝はギッと彼を睨んだ。 「どう、って⋯⋯口封じにしては、やり過ぎっ」 「――もしかして、キスだけで感じたのか?」 甘い流し目を瑠輝へと向け、煌輝は満足そうに口の端に笑みを浮かべた。瞬間、瑠輝はそれを見て、この男に弄ばれたのだと悟る。 もう一体、この男は何なんだよ。 次から次へと見せる煌輝の様々な顔に、瑠輝は完全に振り回されていることに気がついてしまう。

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