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「口封じ、もしかして成功か?」 マロン色の瞳でじっと瑠輝を見つめると、視線が合ったところで煌輝はニコリと笑みを浮かべた。 どうしてこの男は、いちいち自分の魅せ方がこうも上手いのだろうか。 お陰で先ほどから胸が騒々しい。 「そんな訳、ないじゃん」 だから、ついムキになって瑠輝は言い返してしまう。その下腹部には、煌輝には絶対に内緒の、妖しい熱が確実に宿り始めているというのに。 「残念。俺、わりとキスは上手い方だと思うんだが」 悪戯に軽く右目を瞑る煌輝を、瑠輝は無条件に可愛いと思ってしまう。 名は体を表すというが自分とは違い、男は煌びやかに輝く本物の王子様のように見えた。 これは“キングローズ”という肩書き以前に、外へ出たらすごくモテるんだろうなと改めて瑠輝は思った。 やはりシェルター暮らしのオメガである瑠輝とは、全く違う。 「なんか腹立つ」 釈然としない表情で瑠輝はぽつりと告げた。 「どうしてだ?」 すかさず煌輝が反応する。 「もしかして、俺のキスが不満だったか? それとも、もっとその先をご所望だったか?」 瑠輝の頬に触れ、顔を近づけて言う煌輝の行動は無意識であろうか。スキンシップが過剰で、胸の高鳴りが中々鎮まらない。 「違うって」 そう言って触れ合おうとする煌輝の顔を、瑠輝は意識的に手で追い払う。 「じゃあ、さっきから一体何に腹を立てているんだ?」 煌輝からの問いに、――煌輝からのキスに翻弄されてしまった自分と、想像以上にキスが上手かった煌輝に苛立っているんだよ、と心の奥で密かに呟く。 勝手な瑠輝の想像だったが、心を乱される相手を失ってしまった煌輝には、それ以降キスするような相手がいないものなのだと思っていた。 だが、どうだろう。 キス一つで、こんなにも瑠輝を溺れさせてしまう煌輝に、そんな相手が居ないはずはない。 最初に煌輝が話していた通り、決して心を乱すことはないが、欲を充たす相手は常に存在しているということなのだろうか。 たった一度しただけの、キスという行為から煌輝の影にちらつく第三者の存在を見た気がした。 「教えてくれないと、瑠輝のこと――理解できないだろ?」 耳朶を舐めるように囁いた煌輝は、そう言われてがちがちに緊張していた瑠輝とは違い、甘やかな場面に馴れているのだろう。 自身の細く長い指を瑠輝の手へそっと絡めると、瑠輝の掌に軽く触れ、それからもどかしそうに指を艶めかしくそっと擦りつけた。 「⋯⋯ぁ」 ただ指を絡められただけだというのに、瑠輝の前身にはそこから甘く小さな電流が全身を駆け抜ける。 慌てて瑠輝は手を離すが、すぐさま煌輝に捉えられてしまう。 無言のまま、瑠輝はその行為の意味を視線だけで煌輝に問う。すると、煌輝は瑠輝の唇へ啄むようなキスをした。

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