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報われない恋。
ベータとして生まれてきたことで、アルファと番になる資格がない莉宇。
アルファとして生まれてたが故に、自分の意志とは関係なく、決められた相手と生涯を添い遂げなければならない目の前の男たち。
それから、オメガとして性を受けたことでシェルター生活を余儀なくされ、この歳までアルファと番になることを忌み嫌っていた瑠輝。
――どうして。
どうして、こんなにも世の中というものは、上手くいかないものなのだろう。
悲しい。
悲しすぎる。
そして、虚しい。
龍臣の光る指輪を直視し、瑠輝の胸は張り裂けそうなほどぎゅっと苦しくなる。
初恋の相手のそれを、実際に目撃してしまった時の莉宇の方が、もっと悲しく、苦しかったことは想像に難い。
「これ、外してもらえませんか?」
龍臣の左手を唐突に掴むと、瑠輝は彼を見上げながら凄んでみせた。
「は? 何の話しだ?」
困惑しながら龍臣は言う。
「だから、その薬指の指輪です」
目の前の、この男からは絶対に目を逸らしてはいけない。瑠輝はそう強く自分へ言い聞かせ、怯むことなく言った。
「何故だ? 俺のこの指輪とオメガのキミとは関係がないだろう?」
顔を少し顰めて迷惑そうに龍臣は返す。
「あります」
淀みなく告げたその一言に、今度は煌輝が顔を顰める。残念ながら、龍臣に全意識が向いていた瑠輝には気がつかない。
「あなたがその指輪を嵌めていることで、悲しむ人が出てしまうんです」
瑠輝の説得を龍臣は鼻で軽く笑う。
どうしてアルファは、皆このような不遜な態度のヤツばかりなのだろうと瑠輝は思った。
この男といい、煌輝といい。
「仕方ないだろ。ここで暮らす俺たちアルファは、恋と番うこと、結婚。その全てが同じ相手であることはまず稀だ」
ああ、この男も煌輝と同じことを言っている。どうにも変えられない性差別の現実に、瑠輝は悔しさから目を伏せてしまう。
「むしろ、それをしなかったら俺たちの家は廃れていくだけ。仮にシェルター暮らしのキミと、超エリート家系に生まれた俺が番になったとする。キミは俺の家のために、一体何ができると言うんだ?」
一つも笑っていない龍臣からの問いに、瑠輝は言葉を失う。
「――俺たちのそう言った背景も知らず、安易に物申すことは決して賢いことだとは言えない。特に、キミのことを主賓だ何だと言ってここへ連れて来た“キングローズ”様には、な?」
明らかに龍臣のその瞳には、侮蔑の色が浮かんでいた。同時に、シェルター暮らしのオメガ如きが、煌輝へ近づくことは絶対に許さない、そう牽制しているようにも見えてしまった。
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