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「でないと、超エリートアルファがシェルターへ連絡してくるなど、どう考えてもおかしいだろう?」 見つけた獲物を追い詰めるように、水城は視線のみでじりじりと心理的に瑠輝を追い詰めていく。 容易く言い返せないこの現状が、酷く歯痒かった。 「――分かってるよな? アルファと接近したことが判明したら、罰則があることを」 ギクリとしたが、声が出ないことを良いことに、却って瑠輝はだんまりを決める。 「まだ私がこの件に関わっていて良かったな」 ククっと笑う水城に、訝る視線を見せた。 「私は可愛い瑠輝に甘いから――情状酌量の余地があるということだ」 ――何が情状酌量の余地だ。その裏には、変な見返りを要求させられるのではないか。 怪訝そうな顔した瑠輝の頬をぐっと掴むと、水城は自身の方へその顔を強引に向けた。 「睨んでも、その瞳は美しい色をしている」 ポツリと水城はそう言って、瑠輝のことをじとっとした下卑た瞳で見つめる。一瞬にして鳥肌が立つほど、それは気味の悪いもので瑠輝は吐き気を催す。 「さすが私をずっと慕っていた、純粋で可愛い瑠輝」 咄嗟に瑠輝は、枕元に置いてあったナースコールを押した。 「おい! 今、何をした?」 鋭い水城の声がそう訊ね、ナースコールが繋がる音がし、千織の声が聞こえた。 「看護師さん、何でもないです。押し間違いです」 間髪入れずに水城がそう応える。瑠輝はその背後で、あーあーと掠れた声を精一杯上げ、SOSを出す。 『そうですか。分かりました』 無情にも、瑠輝の声は千織の耳には届かなかったようだ。そのままナースコールは切られてしまう。 ――どうしよう。水城が居る間は、ナースコールで助けを呼べない。 気持ち悪い。 本当に、吐きそうだ。 「瑠輝。私はただキミの後見人として、病院から呼び出されお見舞いに来ただけだ。だというのに、そんな嫌がった目をされる意味が理解できない」 わざとらしく水城がそう言うと、ガラリと個室のドアが開けられた。 「失礼致します! 瑠輝くん!」 つかつかと千織が水城の方へと歩み寄り、瑠輝の顔をじっと見つめる。 「水城さん、ナースコールを押し間違えてくれてどうもありがとうございました」 千織はそう言うと、水城より前へ出て瑠輝の顔を覗きに込むように声をかけた。 「瑠輝くん大丈夫? もしかして吐きそうなのかな? 顔が真っ青だよ。右側へ向けるかな?」 ベッドサイドに置かれた床頭台から、淡いグリーン色したガーグルベースンを取り出し、酸素マスクを外して右へ向いた瑠輝の口元へとそれを充てがう。 「悪いですが水城さん、まだ瑠輝くんは本調子じゃないみたいなので、今日のところはお引き取りください。後日、また面会ができるようになりましたら、こちらからご連絡差し上げますから」 冷静に、千織は水城へと退場を願い出る言葉を告げる。 嗚咽反射を見せる瑠輝の背を、千織は優しく擦り「水城さん!」と再度、その名を強く呼び退室を促す。 さすがの水城も、それ以上は押し黙り「瑠輝を宜しくお願い致します」そう言って、その場を後にした。

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