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思わず瑠輝は、その光景に目を奪われた。 更にその奥へ進むと、ようやく煌輝の生まれ育った家が見えて来る。洒落た洋風の庭とは裏腹に、意外と家自体は外壁と同じ、コンクリートが打ちっぱなしのモダンな外壁のものだった。 モダンだがどこか無機質を覚えるその外壁に、瑠輝は少しの違和感を覚える。 ――何だかこの家、おかしいんだよな。でも何が、だろう⋯⋯。 軽く瑠輝は首を捻った。 だが口にできない違和感は、そもそも人の家など行ったことがないせいだと、瑠輝は動機づける。 玄関ポーチへ続く三段ほどの低いステップを上がり、煌輝はドアのすぐ脇に設置された暗証番号装置のカバーを左手で開けた。その間も、瑠輝を抱えた右手は離すことなく、力強く抱えている。 ピピッと解錠したことを告げる電子音がし、煌輝は縦に細長い漆黒のドアノブを自身が通るスペースだけ、横へとスライドさせた。 素早く中へ入った煌輝に、瑠輝は一応「お邪魔します」と小さく告げる。 「意外と礼儀正しいんだな」 クスリと笑った煌輝は、白みがかった大理石の三和土で、ドア方向へ爪先が向くよう、さり気なく丁寧に靴を脱ぐ。 「まあ、言ったのは今日が初めてだけど」 素っ気なく瑠輝が言うと、煌輝はギュッと抱きしめていたその腕に力を込めた。 「嬉しい」 素直に気持ちを告白した煌輝に、瑠輝もまた、嬉しいと感じてしまう。 「大袈裟だろ」 照れ隠しにわざと瑠輝はそう返すが、明らかに頬は上気していた。 「瑠輝だって、感情が顔に隠しきれてないんだが」 煌輝に指摘され、瑠輝は自身の顔を羞恥から素早く両手で覆った。 「それより――狭くて悪いが、しばらくはここで我慢してくれ」 通された何十畳あるのか不明である、広々としたリビングはとても狭いとは言えないものだった。メゾネットタイプで蔓のような洒落たデザインの白亜の螺旋階段が、瑠輝の視界の先に見える。 外見のモダンなイメージとは違い、家の中は壁紙や家具、照明等細部に至るまで、全てヨーロッパ風のホワイト系インテリアで構成されていた。 塀のすぐ内側で咲いていた、あの薔薇のアーチのイメージに近い。 外観に覚えた違和感は、煌輝が常の居場所としている白亜の洋館に匹敵するほどのこの豪華絢爛なリビングには、それを感じ得なかった。 ――あの違和感は一体? 微かな戸惑いを引きずりつつ、瑠輝はここへ来て、初めて煌輝の腕から床へ降ろしてもらう。 「――アルファだらけの白亜の洋館よりは、アルファが俺独りしかいないこの家の方が⋯⋯安全、だろ?」 マロン色の瞳が瑠輝へと流し目をくれ、思わずドキリと胸が大きく脈打つ。

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