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9-8
「生意気な瑠輝らしくない」
全身を預けたまま煌輝は呟く。
「⋯⋯生意気なんかじゃない。ただいつも、僕は自分の意思が人より少し、明確なだけだ」
震えが止まらない瑠輝の指先を、煌輝がぎゅっと握る。
「だったら、瑠輝がはっきりと俺の番になりたいと意思が持てるよう、愛するほかないようだな」
無防備な瑠輝の項へ、煌輝は優しい接吻を落とす。
ビクッと瑠輝の肩は揺れ、酷く煌輝を警戒しているのが分かった。
先日、律儀に二人の間で交わした約束を確かに瑠輝は守っている。
だが、その様子がおかしいことは誰の目から見ても明らかだ。
一体、瑠輝の身に何があったというのだろうか。
「――きっと後悔する」
背を向けたまま瑠輝は言った。
「煌輝は、僕を愛したらきっと後悔する」
「する訳ない」
間髪入れずに煌輝が否定する。
「僕を愛してしまったら、きっと煌輝はすぐにそのことを後悔して、幻滅するんだ」
「する訳ない」
またしても煌輝は即否定し、強引に瑠輝の顔を自身の方へ向ける。
「愛してる」
煌輝はそう言って、唇を重ねた。
優しい口調とは裏腹に、強引に舌をねじ込まれ、息が出来なくなるほど瑠輝の舌は絡め取られていく。
「はァ⋯⋯ぁあ⋯⋯ア⋯⋯ン」
吐息と共に、瑠輝の身体が歓喜する声が洩れる。
長い睫毛の下、マロン色した煌輝の瞳がその声に反応し、ゆらりと官能的に揺らめいた。
とろんとした蜜糸を口の端に溢したまま、飢えた煌輝の舌が、不意に口腔内から出ていく。
「愛してるなんて言葉より、発情した瑠輝の項を噛む方が、俺が後悔していないことを――本気であることを、瑠輝に伝えられるだろうか」
いつの間にか、顔だけでなく瑠輝の全身ごと、煌輝の方へ向けられていた。
真剣な眼差しは、煌輝が発していることが決して冗談ではないことを物語っている。
だからこそ瑠輝は首を小さく振り、頑なに無言で拒否を示す。
「発情期が来るまで、余計なことを考えられないように、瑠輝をここへ閉じ込めて独り占めしたい」
煌輝は大きな手を、何もない瑠輝の喉仏の辺りをネックプロテクターの形をなぞるように這う。
大きなその手から、瑠輝の身体にゾクゾクと快感が生まれていく。
「高校を卒業したら、どのみちシェルターを出ないとなんだろ?」
むしろ今日、何もかもを捨てる覚悟であった瑠輝はその言葉にドキッとした。
「ちょうどいい。俺のところへ永久就職するんだ」
右手を煌輝に掴まれ、そのまま甲へ恭しくキスされる。
「⋯⋯っ、永久就職ってそんな簡単に! さっきからそんな勝手なこと、ばかりで⋯⋯」
「何か問題があるならば一緒に解決をしたい。星宮の家に相応しくないと瑠輝が思うのならば、俺が家を出てもいい」
「⋯⋯家を、出る――? キングローズの、煌輝が⋯⋯?」
目の前が真っ暗となり、龍臣の顔がちらついた。
ダメだ。
こんなことを、煌輝に言わせたい訳ではないはずなのだが。
益々、これでは状況が悪化していく一方ではないか、と瑠輝は感じてしまう。
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