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だが運命は酷なもので、ある日突然、悩むことさえも叶わなくなる。 罰が当たるとは、こういうことを言うのかもしれない。十二歳の少年は、身を持ってそれを知るのだ。 『――二人共、十二歳のお誕生日おめでとう』 政治家や由緒正しき家柄の子息たちが通う都内でも有数の名門校の初等部制服である、モスグリーンのジャケットに臙脂のタイ、またジャケットと同色の半ズボンに学章のワンポイントがついた白いハイソックス。そして、茶色の革のローファーに身を纏った二人は、この家の主であり、アルファでもある二人の両親から祝辞をかけられていた。 『父様、母様ありがとうございます』 ロイヤルコペンハーゲンのケーキディッシュに乗ったバースデーケーキを目の前へ出され、あっという間に二人はそれに釘付けとなる。 母の手作りである生クリームのケーキの(おもて)には、十二本のカラフルな蝋燭と食紅で色が施されたチョコレートの薔薇が並べられていた。 普段、父の仕事へ付き添い多忙な母は、料理等家家事全般は一切せず、代々この家へ勤める手伝いの者に任せている。 だがしかし、年に一度の二人の誕生日の日だけは、母自らが腕を振るい誕生日ケーキを作るのだ。 二人はそれがとても嬉しくて、毎年誕生日はそれだけを楽しみにしていた。 『今年のケーキも美味しそうだね』 マロン色の瞳を輝かせ、ハスキーボイスで嬉々として言う。 『母様の作ったケーキは世界一美味しいので、毎年誕生日が楽しみです』 同様に、ボーイソプラノも目を輝かせ言った。 『まぁ。可愛いプリンスたちは、いつの間にお世辞が上手くなったのかしら?』 クスクスと、口許に品ある笑みを浮かべた女性は『さあ、切り分けましょう』と二人へ声をかける。 『いただきます!』 声を揃え、行儀良く両手を合わせると、切り分けた三角の断面に、隠れていた大きくて紅い苺が姿を見せた。 『わ、苺だ!』 マロン色した瞳を真ん丸にさせ、隠れていた苺をじっと見つめる。 『――二人共、話がある』 年齢より上に見せる為、普段から髪をぴしっと整髪料で後ろに撫でつけている父が、深刻そうな口調で、唐突に切り出した。 まだ十二歳になりたての二人は、途端に全身をぴくりと緊張させる。威厳ある父の口調は、発言の内容に関わらずいつも二人をそうさせてしまう。中央官庁に勤める者、特有の緊張感からだろうか。 とにかく二人は、持ったばかりのフォークを皿の端へ起き、背筋を伸ばし言葉の続きを待った。 『先日、二人が学校で受けた第二次性の検査結果なんだが……』 言いかけたところで、父の顔へ靄がかかる。

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