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「思ったより、タイムリミットが早かったようだ」 脚音の主たちを迎え撃つように、煌輝はそのドアの前へと立つ。 「……どういう、こと?」 恐る恐る瑠輝は訊ねると、この部屋の前で脚音は止まり、次の瞬間、勢いよくドアが開けられる。 「――瑠輝」 予期せぬ人物の登場に、瑠輝の顔は途端に表情を失っていく。 「……水、城……セン、セ?」 微かに震えるその唇で、瑠輝は自身を呼んだ者の名を告げる。 水城と対峙するように立った、煌輝の周囲の空気が瞬時に張り詰めた。 「あー……、やはりそういうことだったのか」 独り納得したように煌輝の顔を見つめていた水城は、国の職員の証である腕賞をつけた体格の良い、スーツ姿の男を二人従えていた。 一体今、何が起きているのだろうか。瑠輝は混乱する。 同時に、ベッド上であからさまに水城への不快感を示す。シェルターの規則により、アルファとの接触が罰則に当たることは分かっていたが、こうなった以上もう今更だとも思った。 「キミはあの日、発情期を迎えた瑠輝を送り届けてくれたベータ(、、、)だね? 星宮煌輝君。否、超エリートアルファの頂点に君臨する“キングローズ”……様?」 水城からの秘密の暴露に煌輝は一切動じず、平然とそれを聞いている。肝が座っているとはこういうことなのだと、瑠輝は思った。 布団で顔のほとんどを覆い隠しながらも、瑠輝はこっそりその様子を盗み見る。 「何も――問題はないはずだが? 瑠輝も今日で十八だし、もう間もなく俺の番となる身なのだから」 挑むように煌輝は告げた。 「それは無効よ」 水城より先に、品良い落ち着いた女性の声がそれを否定する。 声のする方へ瑠輝は視線を向けると、二人組みの大男を掻き分け、煌輝とそっくりな顔した女性が現れた。年の功は煌輝より、一回りは上だろうか。 もちろん、煌輝と同じマロン色した瞳も持っている。 間違いなくこの女性が、遺伝子レベルで煌輝と繋がっている者だということは明白だ。 だがどうして、この女性が水城と一緒に居たのだろうか。 また、どうして「無効」などと煌輝の言葉を否定するのだろうか。 突如湧いて出た疑問を独り思案し、覆っていた布団の陰で瑠輝は息を潜めていた。 「無効の意味がよく分からない。俺たちは、非常に相性の良い運命の番だと思うのだが」 何の躊躇いもなく、煌輝は堂々と女性に告げる。 瑠輝はその言葉に気恥ずかしさを覚えつつも、何とも言えない甘酸っぱさも感じていく。 「それはそうよ。あなたたちは最高に相性が良いに決まってるわ」 予想に反して、女性は煌輝の言葉をすんなりと肯定した。 眉を思い切り顰め、怪訝そうに煌輝は女性を見つめる。そうして、ややあった後にこう訊ねた。 「――それは一体どういうことことですか、母様?」 目の前の女性の正体が明らかとなり、瑠輝は思わず息を呑む。 だが、更に続いた女性からの発言で瑠輝は言葉を失くしてしまう。

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