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「それが現トップの温情なんだろう」 「ど、どういうこと……ですか?」 到底、瑠輝には分からなかった。 「瑠輝のことが、星宮の(あるじ)として心配だったのだろう」 ――何が、“温情”だ。 少しは、罪悪感があったからだろう。 自身の片腕である人物の、超エリートの称号を得たはずの末子をベータと偽らせ、オメガシェルターの職員として任務させる。 果たしてこれのどこが温情なのだろうか。 全く解せない。 結局は、超エリート政界一家の名に相応しくない汚点を。星宮の長子が“オメガ”であるという恥ずかしい事実を隠蔽するために、シェルターへ入れたという事実でしかない。 シェルターに入れられたオメガは原則、それ以前の記憶が全て消されてしまうため、星宮家としても都合が良い。 ただそれでは、星宮の主も良心が少しは傷んだのであろう。 水城の人生も瑠輝の人生も、そして実の兄を再び好きになってしまった煌輝の人生も、全ては星宮の主に狂わされた被害者なのだ。 瑠輝は、ハハと乾いた笑みを見せる。 「マジで勘弁なんですけどっ……だったらまだ、どうしようもなく生活能力のないクソ親に捨てられていた方がまだマシっ……でした、ね」 言い終えたところで、瑠輝はもう一度ハハと乾いた笑みを見せた。 自然と目頭に、熱いものが込み上げてくるのが分かる。 ――自分で言ってて、酷く惨めだ。 どうしていつも僕だけが、こんな目に遭わなければならないんだ? 日本で一番有名な“星宮”の長子として生まれてきたはずの瑠輝は、オメガという事実だけで(あるじ)に捨てられたのはやはり間違いない。 はっきりと水城は言っていなかったが、きっとそうだろう。 ――ああ、煌輝が「母様」と呼んでいたあの女性も……オメガの俺を生んでしまったあの(、、)女性も、僕と同じ被害者か。 たとえ裕福でない一般家庭に生まれたオメガであったとしても、親に望まれ、愛され育つ場合も少なくないとされている。 今こうしてその出自が明らかになったとしても、“シェルターのオメガ”というだけでその規則になぞり、再び捉えられ、ようやく再会した身内と引き離されてしまうのだ。

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