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002.前髪と鋏

 パチパチ。僕の持つ鋏が啄む度、明るい色の前髪が細かな光になって散っていく。  目を閉じて終わりを待つ、珍しく無防備な君の姿。睫毛の長さも唇の色も、こんな時にしか見られない。  だからかな。  最初に鋏を持たされた時、初めて君に選ばれた気がしたんだ――なんて。  口にはしない。できるわけがない。

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