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011.同化願望

 地元を出て、高校の頃から胸に燻っていた気持ちの正体に気が付いてしまった。  たまたま、アイツが使っていた香水を見つけた時にわかってしまった。  これは恋なんかじゃない。歪んだ羨望。  ああ、俺はただ単に、アイツになりたかったんだ。  ――それから数年後。 「え? お前まさか……山梨?」 「え? もしかして君、海凪?」  たまたま参加した同窓会で見つけたのは、かつての俺の姿だった。あっちもかなりびっくりしただろう。会場に入って最初に見つけたのがかつての自分の姿だったんだから。  学生時代には付き合って別れてを散々繰り返した俺たち。互いに恋とは違う違和感を抱き続けていたんだけど、なるほど。違和感の原因は、あっちも同じだったわけだ。  ホント、なんでお前が俺なんかに憧れてたのかはわかんないけど。  俺たちは性格も環境も好みもまるで正反対だったから、これも無い物ねだりの結果だったりするのかな。 「……駅前のホテルに泊まってるんだけど。」 「へぇ。」  あーだこーだと理屈を捏ねて恋の完成形を目指すガキ臭さは互いにもうない。単純に『寝ようぜ』という意味でしかないあっちの言葉を、俺は首を縦に振るでもなく当然のように受け入れていた。

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