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017.under the rose

「こんなに奇麗な薔薇は初めて見ましたよ。」  一番目立つ噴水前の花壇で一等輝くこの薔薇は、私が命を懸けて育てる箱入りのお姫様でもあり、ほかの草花たちを従える庭園の女王様でもあった。  だから、そんな褒め言葉は当然なんだ。 「こうも美しく育てるには、やはりなにかコツがあるのですか?」 「コツもなにも、ただ愛情を込めて日々尽くすように大切に育てているだけですよ。」  そしてそれが、私に唯一許された君への愛情表現。  ――君の死を受け入れられなかった私の手で、君は薔薇へと生まれ変わった。  土中で薔薇の根を羽のように広げているのだろう君はこんな私を浅はかだと軽蔑するだろうか。いや、それならばこうも美しくは咲かないはず。  縋るような想いに揺れて、胸の中の君は今もくるくると表情を変えている。  もう君なしでは生きていけない私を、哀れんで笑いかけておくれ。亡き彼の赦しを望みながら、今日も私は指を土に染めるのだ。

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