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019.うそつき

 花火の音を聞きながら、茂みにしゃがみ込んで泣いていた。  今なら誰も俺の声なんて聞かない、姿なんて見ない。だって夜空にはまばゆい大輪の花が咲いているから。  なのに。 「……なにこっち見てんだよ。」  鼻が詰まりかけた情けない声じゃ凄んでも意味なんてなかっただろう。  それでも俺を眺めていた優男は、いつもの飄々とした態度を忘れてしまったみたいに落ち着きを失ってた。 「俺がフラれたの、見てやがったな……!?」 「ち、ちがっ、」 「じゃあなんでお前はこんなとこにいんだよッ!!」  立ち上がって声を荒げてみたけれど、潰れそうだった胸はますます痛んで、すぐに言葉が続かなくなる。 「なんでっ……なんで……ひっ、ひうっ……」  男同士なんて、ダメなんだってさ。だから俺はダメなんだって。だから俺のこと、気持ち悪いんだって。  そこまで言われて独りで逃げてきたのに、どうしてこの男は俺を追ってきたんだろう。 「……えっと、風の便りを聞いて来たというか。」  それじゃ、駄目? 視線で俺に尋ねながら近づいてくると、細腕が開かれる。  拒否の気力もなくなされるがままに抱かれてみれば、白い細いとばかり思っていたこの男の腕は意外に頑丈だ。 「大丈夫。なにも見てない。泣きたいだけ、泣いときなよ。」  俺は、こんな時にそんなことを言われて泣くのを我慢できるほど、強くない。  甘えて縋って泣き喚いて、流した涙は花火の色でカラフルな雨みたいに落ちてった。

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