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021.アイ・コンタクト
二人で初めての旅行だってのに、なんだってこいつは見慣れないゴツいサングラスなんかしてるんだろう。
「だってコレしてればキスできないだろ?」
まだ付き合いはじめの蜜月期。どうも俺が人目を憚らずあちこちでキスをしてきかねないと警戒しているらしい。俺ってそんなに節操ない印象?
「へぇ、いいじゃん。」
でもま、そんなのも楽しいかもな。にやっと笑いながら事情に理解を示せば、あっちはなぜだか「え?」って顔だ。
「ちょっとエロいよな。外すときはキスしていいってことだろ?」
「なっ!!」
発案者のこいつにはそういう発想はなかったらしい。とはいえそろそろ付き合いも三ヶ月。絶句の態から持ち直すと、頑張って不敵な口で笑う。
「そ、そうだよ。オレが決めた時にだけ許してやるんだよ。」
慣れが出てきたせいなんだろうか。最初は真っ赤になって黙り込むことが多かったのに、最近のこいつはなにかとマウントを取りたがる。
俺としては可愛いからなんでもいいんだけど。
「犬と飼い主みたいだな。吠えてやろうか? ワン!」
「ぷっ……別にそこまでしなくていいよ。」
「へえ、こんなデカイ犬はいらねーか。」
「ふふふ。いらなくない。」
そう言いながらサングラスが外された。昨日ぶりに見たくりくりの瞳が俺を上目に覗いてるから、これはオッケーサインだな。
他に人がいないバスターミナルで、俺たちは記念すべき第一回目の旅行のキスを交わした。
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