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023.←一目惚れ←

 仕事の都合とはいえ、しばらくこんな田舎に通わなくてはいけないだなんてついてない。  目的地の駅はまだ聞きなれない名前をしていた。到着間際のアナウンスが流れ、僕はやれやれと重い腰を上げる。網棚から荷物を下ろさなくては。  陰鬱な気持ちが拭えないまま、対照的に眩しい焼けるような車窓へ視線を向けた。  そうして僕は見てしまうのだ。 「かわ、いい……。」  え、なにあれ。すっごくレトロなバイクに跨る同い年くらいの若い人。  気のせいじゃなきゃ彼の黒い瞳も僕を見ていた。穢れを知らないみたいな、純粋さを湛えたキラキラの目。 「っ!」  反射的に窓にへばりつく。じっとり暑いガラス窓の向こう、あっという間に小さくなってしまった踏切で、彼はバイクのハンドルを切っていた。線路沿いの小道を走り出し、僕の乗る汽車を追いかけるように走り出す。  まさか。まさかとは思うけど。 「会いに来るのかな。」  そう思った瞬間に胸がぎゅーんと苦しくなる。えー? 一瞬目が合っただけの僕に? わざわざ焦ってあんなにバイク走らせて? 来るの? 情熱的すぎない?  突っ込みどころは満載なんだけど。 「うわぁ……。」  口許を手で隠しながら、思わず声が漏れた。 こんな田舎にあんな可愛い子がいるなんて……こんな運命的な出会いまでしちゃったら……、きっと、放してあげられない。

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