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032.飼い主はどっち?
「アアァ――ッ!!」
一際甲高く甘く啼いて、傷だらけの細身は拘束具に吊られたまま、だらりと脱力したきり動かなくなる。でもそんなのはほんの一分足らずのこと。
泡を吹くかというくらいに大きく揺らして突き上げたはずなのに、さして間を待たずに細身には大袈裟にも見える痙攣が蘇った。
悪夢に魘されるような必死さで、白濁に汚された口が言うことには、「もっと」「足りない」「早く」……、いやいや、お前つい今しがたに確かに意識飛んでたから。
「マジかよ……、ハッ……。」
額をだらだら濡らしていく滝みたいな汗を手の甲で拭きながら、俺は思わず笑ってしまった。お前どんだけセックス中毒?
「お願いっ、お願いっ、はやくぐちゃぐちゃでいっぱいにしてぇっ、早くううぅ……、」
禁断症状でも起こしたようになりふり構わぬ懇願の言葉。足首にくっきりと俺の手の跡を残したまま、お前の細脚もまた絡みついてきた。これは、離してくれそうにない。力尽くでも難しいくらいだ。
だがしかし、こんなに手痛く抱いても、こんなに無我夢中に求められて、……まぁ。
嫌な気はしなかったりするんだよな。
いつの間にやらしっかり勃ってしまっている自分に気付く。確かに空になった感覚がさっきまであったはずなのに。訓練されたみたいに勃ってしまう自分の雄が、猛々しいようで、幼気なようでもある。訳が分からねえ。
しかもそそり勃った先に秘部を押しつけながら「あん、あん、」って、お前のスタートはまた早いな。
「……仕方ねぇやつ。」
パンっと尻を叩いてやれば、「ひゃあんっ!!」だって。なんて甘ったるい。
それに溺れている俺は、果たしてこれから、コイツなしでもちゃんと生きていけるんだろーか……?
――これが最後とせがまれて抱いているだけのはずだけど、自信がなくなってくるのは何故なんだか。
……飼い慣らされていたのは、まさか、俺?
「はやくっ、挿れてっ!」
「急かすなバカ。」
「ひゃああああァァッ!!」
胸の突起を強く摘んだだけで背をのけぞらせてこれなんだ。
飼い主は俺、そのはず。
クスリじゃないんだからやめられる、そのはずだ。
禁断症状なんて、無縁。……そのはずなんだ。
「奥まで来れたねっ、あはっ、ふふふ……!」
繋がった刹那に見せたお前の恍惚とした笑みは、いつもにまして芥子の花のように艶やかだった。
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