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033.天使の正体
ゆったりとした白いシャツに、洗いざらしの藍色のタイトジーンズ。形の良い脚を浮き彫りにするような濃淡は、さながら青写真に映った虹のよう。
ごく普通、ありきたりな恰好も、君が身につければすべて美しい装いへと変わる。
その脚の歩みは一直線にすらり。進む先で切った風はその背で逆巻くように広がるから、空を抱く前の力強い羽根の幻覚すら見せつける。曇りない青い瞳も、きっと主の玉座を映してああなったに違いない。
ああ、彼はきっと天使なのだ。穢れをなにも知らない、神に愛された天の使い。
だからこそ――
「さあ、僕をどうするかはあなた次第だよ。」
君がそう口にして清楚ににこりと笑った瞬間、私は完全に囚われてしまった。無垢な君を愛欲の炎で無惨に穢して焼き散らす、そんな甘美な妄想に。
でも勘違いはしないでほしい。私は決して加虐趣味なわけではない。
だって君が天使のままでは、私たちはいつまでも添い遂げられないじゃないか。
君が醜い人間になれるまで、私が君を貶めるしか、他に術はひとつもない。
そう説明した私が涙ながらに白いシャツを破けば、君の天使の瞳に一瞬、情婦の艶が宿った。
和花言葉SSSシリーズ
藍/花言葉「美しい装い」「あなた次第」
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