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045.スポーツの日
「テニスなんて久々だなぁ。」
飲み足らないまま終わってしまった同窓会の直後、ショッピングモールの屋上にコートがあると聞いたオレたち元テニス部は懐かしさのあまりわざわざテニスなんてしに来てしまった。健康的すぎて笑っちまうけど、気持ちいい夜風で酔いが冷めていく。
「卒業してからはさっぱりなのか?」
「んー、遊びでする程度で昔ほど真面目じゃねーな。そっちは?」
「さあ。」
つれない返事をしながらインテリ眼鏡の位置を直しているお前は、早速レンタルのラケットを漁っていた。やる気満々じゃん。
「どうだ? 大人になったらテニスだけじゃ物足りないだろう。何か賭けよう。」
いい子ちゃんぶってる割には悪さも上手、それが我が部の部長殿だった。相変わらず似合わないニヤリ顔で、お前はまたそんな面白いことを。
「いいじゃん。じゃあオレ、この後飲み直したい。」
「いいぞ。いくらでも奢ってやる。」
予想以上の上出来なお言葉に、オレは思わず「ひゅう」と口笛を鳴らしていた。
「じゃあお前が勝ったらどうする?」
オレも適当にラケットを選んで、あっちとは逆側を目指す。ネット越しに見るお前はボールの具合を確かめて、満足したのかいざサーブの構え。
「――お前をもらう。」
「は?」
スパンッ!!
やけに気合の入った初手の猛襲。
え? なに? オレ、今の言葉がよく聞こえなくて、取りに走ることすらできなかったんだけど?
「だから、――お前をもらう。」
ブランクを感じさせない姿勢で立ち上がってから、お前はもう一度繰り返した。聞き間違えじゃ、なかっ、た……?
「俺のモノにするから、嫌なら死ぬ気でやってくれ。」
「……!?」
レンタルのラケットはグリップがカラカラしてて、汗も滲まず握りが悪い。勝てる気が、まったくしない。
こんなの、どうしろっていうんだ?
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