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048.逃してなんてあげないよ

 人の温もりを知らなかった僕にとって、彼の隣はとても心地よかった。 「俺たち親友だろ!」なんて、少年漫画みたいなセリフを当たり前のように口にする。彼はそんな人。  ずっと側にいてくれると信じて疑わなかった。だから僕は、子供の頃からいつも彼のあとを追っていた。  中学も高校も、当たり前みたいに彼と同じ学校を選んでた。クラス替えにも一喜一憂して、部活までついて回って。  それなのに。 「あぁ、あいつ? ガキの頃から一緒だけど、金持ってるし、なんでも言うこと聞いてくれるからさぁ。」  偶然聞こえてしまったその言葉。 「好き? まーさか! 都合いいパシリだよ。」 「へー! いいじゃん、今度貸せよ。」 「一日これくらい出すなら都合してやる。」 「やっす!」 「ひゃはははは!!」  聞きたくなかった。知りたくなかった。  強い友情に憧れて盲目になっていた僕は、なにも知らなかった。それどころか、いつか君と心休まる家庭を築けたらとすら夢見ていたんだ。  たとえ君が僕を選ばないとしても、普通に好きな女の子ができて一緒になるんだと教えてくれたなら、まだ素直に身を引くこともできた。だけど。 「――じゃあ今度は、僕が利用してやる……!」  今更逃してなんてあげられない。君には一生、僕のおままごとに付き合ってもらうよ。 和花言葉BLSSSシリーズ お題: アジュガ/花言葉「強い友情」「心休まる家庭」

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