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第4話 兄さん
「ただいま、兄さん。」
「あ、優月!おかえりー。随分遅かったね?」
俺の姿を視界に入れると、兄さんは暴れるのをやめてこちらへと近づいてくる。
「別に、普通でしょ。」
兄さんは、大学受験に失敗し、そのまま壊れた。父も母もそんな兄に関わりたがらず、兄の世話は全て俺に押し付けた。兄は両親から金をたかり、遊び歩いて普段は家にいない。が、たまにこうして帰ってくる。
「…まあいいけど。ねえ優月、兄さんちょ~っとイライラしてるから、発散させて♡」
こうして欲求やストレスが溜まった時だ。
「 大好きな兄さんのいう事、聞けるよね?」
耳元でそっと、そう囁かれる。がっちりと固められた腕に爪を喰いこまされて痛い。
「うん…。」
回答など待たれるはずもなく、そのまま兄さんの部屋へと連れ込まれた。
「あ゛っ。うっ。ふぅっ。」
兄さんが俺の上で跨り、滑稽に腰を振る。躊躇なく奥まで捻じ込まれ、引っ掻き回されてナカが痛い。
「あ゛っ。」
首を締めあげられ、生理的な涙が頬を伝う。
「ははっ。惨めだね、優月。いい成績とって、愛されて。俺と違ってみんなに期待されて。なのに、出来損ないの俺に突っ込まれて犯されて、啼いてるんだもんね?」
耳元でそう囁かれる。今にも泣き出しそうな顔で、嫉妬と羨望に満ち溢れた顔で。
「い゛っ。」
首筋に強く噛みつかれる。血が溢れたのか、背中に生暖かい感触が伝う。
「滑稽に喘いでなよ、優月。」
兄さんはそう僕に吐き捨て、再び僕のナカを抉った。
「…優月、生きてる?」
ペチペチと頬を叩く感触に意識が浮上する。
「ん…兄さん?」
ぼんやりと開けた視界に人影が映る。
「違うよ、優月。俺は樹。あいつもう出てったし迎えに来た。立てそう?」
そう言って俺を見つめる樹の手が頭の方へと回る。
「無理…部屋まで運んで。」
身体中が痛くて怠い。ああ、疲れた。
「分かった。」
温かい樹の体温に、らしくもなく縋ってしまいそうになった。
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