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第6話 呪縛

「…痛い。」  ずきずきと腰が痛む。連続して使ったからか。 「はぁ…」  隣ですやすやと寝息を立てている樹を見て、ため息をつく。 「お前だってどうせ、受け入れてくれるなら誰でもいいんだろ。」  そんなことを寝顔に呟く。そうだ。誰でもいいんだ、樹は。たまたま最初に見つけたのが俺であっただけで。 「所詮はただの虫だ。」  ただそう吐き捨てる。 「...水飲も。」  喉が干からびて痛い。水が欲しい。 「ん...」  まだ重怠い腰をゆっくりと持ち上げて、一階リビングへと降りた。 「あれ…」  水を飲んで部屋へと戻ると、樹が起き上がっていた。 「優月っ!?どこっ!優月っ!」 (やっぱり…) 「暗いよ優月っ!怖いっ!優月っ!」  樹はネグレクトで餓死寸前になったことが原因なのか、暗所で一人になることができない。 「いいこにするからっ!言う事聞くからっ!優月っ!」 (もう少し…)  暗闇に震え、俺を求める樹に優越感を感じる。 「優月ぃ…お願い…捨てないで…」  半狂乱の叫び声が、嗚咽交じりの泣き声へと変わる。 (そろそろいいか…) 「樹。」  扉を開け放ち、姿を見せる。すると、うずくまって動けずにいた樹がおそるおそるとこちらを見る。 「優月っ!」  姿を確認した瞬間、俺の足元に絡みついてくる。 「優月っ!優月っ!優月っ!」  名前を呼び、縋りついてくる。 「捨てないよ、樹。樹はいいこだよ。」  そんな樹にそう言い、頭を撫でてやる。 「大丈夫。ひとりにしないよ。」  優しく抱きとめて、そう囁く。 「大丈夫、何も心配しなくていい。俺は傍にいる。」  この愛しい幼馴染を、俺に縛り付けておくために。

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