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第7話 優月の独白(両親)

「………。」 「………。」  両親は、仕事だなんだと言い訳しているが、時々こうして帰ってくる。 「………。」  理由は分からない。せめてもの親面なのだろうか。兄さんは俺が期待されているだとか、愛されているだとか勘違いしているようだが、そんなことはない。実際は兄さんだけが期待をされていて、俺はいないも同然の存在だった。…兄さんだけが、俺の存在を肯定してくれた。でも兄さんが失敗して、荒れた。だからその面倒を特に何も期待していなかった弟に押し付けただけ。俺は、両親の風よけ…兄さんに都合のいい捌け口にされた。 「そ、そういえば優月、最近学校はどうなの?」  母が引きつった笑顔で尋ねてくる。 「別に普通。」  少しも目を合わせずに箸を進める。 「そ、そう。」 (話題なんか作ろうとしなくたって、話すことないだろ。)  どうせ何も期待してないくせに、何を聞くことがあるのか。 「じゃ、俺もう寝るから。」  食器を片付けて、さっさと部屋へと上がる。 「あ、優月!」  後ろから呼び止める声が聞こえたが、無視してそのまま部屋へと戻った。 「優秀で在ることを子供に押し付けた挙げ句、簡単に切り捨てて享楽にふけるお前たちに俺が感じる価値なんてない。」  これが、俺にとっての親。唯一知っている親子関係。普通として語られるものとはまったくかけ離れている、とっくに壊れてしまった関係。 「いや、そもそも俺には関係は作られていなかったかな。」  全ては兄さんのもの。俺も兄さんのもの。それ以上でもそれ以下でもなかっただけの世界。 「今さら○○○○○なんて、絶対に思わない。」  そんなこと、思うわけがない。  そんなこと、望むわけがない。  そんなもの、いらない。 「はあ。」  大きなため息をひとつ溢してから、目の前に広がっていたベッドに飛び込んで顔を埋めた。

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