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第10話 悪夢のそのまた前の悪夢(1)

 食事を終えて再び自室へと戻る。怖い。普通じゃない、あんなもの。あんな、円満な家族の団らんみたいな。 「...気持ち悪い。」  期待したくない。また壊れるのが怖い。こんな、またいつかみたいに、一緒に笑えたら、なんて馬鹿な願いなんて。 「優月」  音もなく入ってきた兄さんが、俺の名前を呼ぶ。 「...兄さん、何のよ..」  問いかけようと口を開けると、視界が反転した。まっすぐ見た先にある景色が、天井へと変わる。 「あ゛っ」  ベッドへと倒れこみ、押さえられた首が軋む。...そうか、首を、押さえつけられたのか。 「ど、して。」  どうして、なんて、分かりきっていた。ああ、やっぱり、兄さんは壊れたままだ。 「あ゛...」  首に置かれた手に力がこもる。 「...あれ、優月、泣いてるの?期待しちゃった?」  無邪気に俺の首を締め上げる兄さんからそう声かけられる。 (泣いてる...?)  確かに、顔が濡れている気がする。 「もとの兄さんに戻ったかもって期待した?お前の大好きな兄さんに。」  俺を嘲りながら兄さんはそう言う。 「あ゛...う゛」  苦しい。息ができない。深く入る指が痛い。 「あいつらも馬鹿だよね。ちょっとニコニコして謝れば戻ったって信じるんだから。しかも、俺がお前にしてきたことを知っていながら、お前に俺と家族をしろだなんて言うんだ。」  全てを嘲って兄さんが言う。 「ね、優月。」  ふっ、と首から手が離される。 「がはっ、げほっごほっ。」  首を締め上げられていた反動で咳き込む。 「できるよね?」  何が、なのかはもう知っていた。 「うん、兄さん...」  バキッ。 「い゛っ」  返事をすると、左頬を殴られた。 「優月、」  冷えた瞳に見据えられる。 「はい、兄さん...」  そう答えると、兄さんが笑顔になる。 「うん。そうだよ優月。イイコ。」  頭を捕まれそこへ持っていかれるのはすぐだった。

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