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第6話
放課後。
あの後の俺はさして何事もなく、授業を受けることが出来た。
教室内は放課後とあってガヤガヤと騒がしい。
俺は自分の荷物をサッと詰め込んだ。ここにいても喋る相手や用事もないし、そもそも学校に長居すると鈴村達に出くわす可能性だってある。
「佐々木」
ふと前から俺の名前を呼ぶ声が聞こえ、顔をあげた。
見るとそこには同じクラスメイトである宮本菜月が立っていた。
赤茶色の双眸とそれらを縁取ったクリーム色の睫に同じ色の柔らかな髪、整った輪郭に収められた赤い唇と容姿の優れたこの男は学芸や武芸も優秀で小耳にはさんだ話によると俺と同じαだという。
そんな宮本が眉を顰め憂いた表情を見せている。
「午後の授業から体操服に着替えていたけど、何かあったのか?」
どうやら宮本は俺が途中で体操服に着替えていたことを気にかかっているらしい。
宮本はこのクラスの委員でその肩書にふさわしく、気配りができる人間だ。
現にこうやって心配そうに声を掛けられるのは初めてではない。
宮本は俺がいじめられていることを知らないようだが、クラス内でういて一人でいる俺のことを放ってはおけないのだろう。
「用務員のおじさんが庭に水やりをしていたところに偶然出くわして、それで誤って水をかけられたんだ」
俺は保健室でついた見苦しい嘘ではなく、別のあらたな嘘をついた。
宮本はそっかと特に疑うことなく納得し、「何か困ったら俺に相談してね」と一言つけ足して、待たせていたのだろう仲間のところへと去っていった。
…帰るか。
俺は荷物を肩に寄せ教室を後にした。
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