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第8話

 コンコン。  習った内容をなぞるようにして復習すること約一時間、部屋の扉がノックされた。 「奈留お坊ちゃま御夕飯の準備が出来上がりました」  夕飯の支度が出来たらしい。  俺は手に持っていたシャーペンを机に置き、場所をリビングに移動し、いつもの席へと腰を下ろす。  テーブルの上には美味しそうな料理が並べられていた。  ホカホカした白米とワカメと大根の味噌汁、ジャガイモとお肉たっぷりの肉じゃがに胡瓜の漬物。  家庭的な料理の品々は直幸の得意とすることだ。 「いたたきます」  一人、手を合わせ食事を始める挨拶し、箸を持って食事を始めた。  最近は両親ともに仕事が忙しいのだろう、こうやって一人でご飯を食べる機会が増えた。  一人と言っても後ろには直幸が控えているので特に寂しさを感じたことはないが、静かな食事になったのは確かだ。  俺は黙々と食事をとった。 「ごちそうさま」  全て平らげて完食した俺は再び手を合わせて食べた食材達に感謝の意を伝えた。 「御完食ありがとうございます。では食器を片付けさせていただきますね」  後ろに控えていた直幸がテーブルの上の食器を重ねて持ち歩く。 「あ、そういえば」  ふと直幸が歩を止めて俺の方に振り返り、口を開いた。 「言い忘れていたことがございまして、明日に瑠奈お坊ちゃまが我が家にお帰りになられます」 兄が家に帰るだって…?  俺はポカンと口を開いて固まってしまった。

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