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第9話
次の日。
俺は昨日の兄が帰るという知らせを聞いてから、モヤモヤとしたわだかまりができていた。
そして、そのわだまかりが解けないまま登校し、下駄箱から上履きを手にとった。
別に兄自身との関係は悪くはないが、昔から親に比べられたことと兄の性格も相合わさって兄と接するのは苦手だ。だが兄が帰る以上、接しないわけにはいかない。これは我慢する日々が続きそうだ。だけど何でよりにもよってこの時期に帰るんだ…
頭の中で色々と思案していると肩に手を置かれた。
俺は何も考えずに後ろを振り返り、そして顔を引きつらせた。
振り返った先にはデカく筋骨隆々な体とツンとした青髪、鋭い野獣のような目をもった男、鈴村が立っていたからだ。
鈴村達はいつも遅れて学校にくるのに、なんで今日にかぎって早く来るんだよ…!
「よぉ、こんな時間にあうとは奇遇だな」
「グゥッ…!」
鈴村は口元をつり上げて俺の肩をつかんだ手にさらに力をこめてきて、思わず苦痛の声をあげる。
後ろには鈴村を取り巻く連中のうちの一人が目元を細めて下品に笑っている。
「お前と会えて気分がいいからよ。ちょいとつらかせや」
有無を言わせぬ鋭い眼光が俺を射貫き、頭の中が鈍くなるような感覚がする。
「わ、わかった…」
俺は鈴村の威圧に耐えかね返事をしてしまった。
鈴村達はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
そして自身の下駄箱に靴をしまい込んで上履きに履き替えると俺の腕を強く掴み、ズンズンと前に進んでいった。
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