13 / 30
第13話
保健室を出たあとの校内は休み時間なのか、廊下にも何人か生徒がいてガヤガヤと騒がしかった。
俺はそんな生徒たちの横を通り抜け、ある人物を探す。
足を自分の教室の方に歩かせつつ、辺りをキョロキョロと見回すと前方に探していた人物が目に入った。
「宮本!」
俺が大声で宮本の名前を呼ぶと、彼はすぐさま反応し、傍にいた仲間のもとを離れて俺の方へと駆け寄ってきた。
「なに佐々木?」
「保健室の先生から聞いた。保健室に運んできてくれたのは宮本だって…」
「ああ、それか」
宮本は思い出したかとでもいう様に手をグーの形に変え、もう片方の手のひらにポンと叩いた。
「その…助けてくれてありがとう…」
おずおずと感謝の言葉を伝える。同級生あいてに礼を言うのは慣れていなく、顔に羞恥がかかり顔を下にうつむかせ最後には尻すぼみしたかのように声が小さくなってしまった。
「礼なんて別にたいしたことはしてないから言わなくていいのに」
宮本はそう言うと、俺の頭に手をおいて撫でてきた。
「おい、感謝はしているが、頭を撫でないでくれよ」
視線を宮本に合わせる。
宮本自身は目を細め柔らかな表情を見せているが、俺にとっては何だか子供扱いされているようで癪に障ったし、加えて周りのチクチクと刺さる目線が気になって仕方がない。
俺はキッと宮本を睨みつけながら彼の手を振り払った。
「佐々木」
ふと宮本の表情が真剣な顔に変わる。
俺はそんな宮本の雰囲気に飲まれるようにして黙って彼を見つめる。
「お前に聞きたいことがあるんだ。場所を変えよう」
有無を言わさぬ眼差しでじっとこちらを見る宮本に、俺はとうとうこの時が来たかとただコクリとだけ頷いた。
ともだちにシェアしよう!