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第16話

「すいません、遅れました!」  ガララと教室の扉が宮本によって開かれた。  それによって教師や他の生徒たちが俺たちに目を見やる。  俺はその視線から逃れるように顔を下に俯かせた。今の俺の状況は宮本にお姫様抱っこされたままだからだ。 「宮本と、それからお前は…佐々木か」  黒板にチョークを走らせていた教師が手を止めて、教室に入った俺達を確認をした。  宮本と、一拍おいて俺と。  俺はただただ羞恥心を感じた。こうなることがわかっていたので、教室に入る手前、宮本に降ろすよう訴えたのだが、この男は「平気平気」と俺にとってはその先のことが平気じゃなくなるような言葉をしきりに言ったのだ。  そして今に至る。 「佐々木が保健室で休んでいまして、彼をここまで連れてくるのに時間がかかって遅れました」  宮本は半分が本当のもう半分が嘘のことを堂々と口に出した。  確かに俺は保健室に休んでいたが、ここまで来るのにはそう時間はかからなかった。そもそも、俺は一回教室の方に来ていた。その時に宮本を見つけて、彼のもとには同じクラスメイトが数人いたはずなのだが、彼らは空気を読んだのか本当のことを黙ってくれていた。 「そうかそうか、事情はわかった。二人とも早く席につきたまえ」  教師はこの状況も含めて納得したのだろう、特に俺らを咎めることなく席に座るよう促した。 「佐々木よかったな」  宮本が俺だけに聞こえるような小声で言った。 「みんなにお姫様抱っこされているのを見られた俺の心境はよくねーよ…」  俺もまた宮本だけに聞こえるような小声でそう返した。  宮本は苦笑しながらも、律義に席まで運んで俺を椅子に下ろし、それから彼自身も自分の席に着いた。  自席に着いてからも、先ほどのお姫様抱っこの件が頭にちらつき周りの生徒はどんな反応をしているのだろうかと辺りを窺ったが、周囲の生徒はさして気にしている様子はなく真面目に授業に勤しんでいた。  こんな…ものなのだな…。  自身の羞恥と周りの反応の差が大きかったことに多少の驚きを感じつつも、自分も授業に勤しもうと鞄から荷物を取り出した。

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