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第18話

「奈留どこ行くのー?」 「自室だよ」 「えー、もっと話しようぜ。久しぶりの再会なんだからっ」  兄の制止の声が背後からかかった。  俺は何とかその場をやりきって退出しようとしたが、叶わずにソファーから立った兄の手によって無理矢理連れ戻され、ソファーに強制的に座らされた。隣に兄が再び腰を下ろす。  かなり力強く腕を引かれて鈴村に殴られた傷に痛みが走ったのも合わさって、気持ちが底をつくように悪くなる。  俺はジト目になり、己の不機嫌さを隠そうともせず兄の顔を見る。 「そんな嫌な顔すんなってー、お兄ちゃんが悲しむぞ」  悲しむなら引き止めるなよ、と内心で悪態をついたが、それを本人に言っても悲しむような仕草をするだけで離してくれないのは長年同じ屋根の下で過ごしていた俺にはわかった。 「話って、俺は兄貴と話すことなんてないよ」 「俺はある」  そう言って兄は持っていたアイスの棒を近くに置いてあったゴミ箱へ投げた。  棒は綺麗な放物線を描き中へと入る。  俺はその一連の流れを黙って見ながら、こう考えた。  兄は話足りないということだから、ここで変にあーだこーだ言い返すよりも黙って兄の話を聞いた方が無駄な労力を使わないで済むし、早く解放されそうだ、と。  それに今までだって兄の話に無理矢理付き合わされ、中々離してくれなかったことも多々あった。そういう場合も嫌々だと駄々をこねず、大人しく聞き手に回ったほうが穏便にことを済ますことが出来た。  俺は兄に反抗することをやめ、上半身の向きを兄のほうへと変えた。

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